角谷将視と濱口啓介によるノンバーバルパフォーマンスデュオ「ゼロコ」。
5回目の高知大道芸フェス参戦となる今年は、フェス前日に舞台「フラッグ」を
上演! ゼロコ結成秘話や舞台の見どころなどを聞きました!
5回目の高知大道芸フェス参戦となる今年は、フェス前日に舞台「フラッグ」を
上演! ゼロコ結成秘話や舞台の見どころなどを聞きました!
おふたりはどういうきっかけで
知り合ったんですか?
知り合ったんですか?
角谷/2011年に「が〜まるちょば(※1)」さんが、パントマイムをベースにしたコメディ作品を創作するプロジェクトを立ち上げて、そこの研究生という形で知り合ったのが最初ですね。
濱口/当時は僕も角谷もソロで活動していて、 が〜まるちょばさんのもとでパントマイムを学んだり、一緒に舞台出演させていただいたりしていました。それから2016 年に結成して、今10年目ですね。
研究生になった当時は、
それぞれにパントマイムの下地はあったんですか?
それぞれにパントマイムの下地はあったんですか?
濱口/僕はパントマイム自体はその時に初めてやり始めたんですけど、角谷は経歴がすごくあって...。
角谷/僕はその時点でパントマイムを6年ぐらいやっていたんですが、が〜まるちょばさんがやっているような、お茶の間に向けて、より多くの人に広がるパントマイムってどういうものなんだろうと思って、カンパニーに入ったという感じですね。
キャリアの違うおふたりが、
どういう経緯で組むことに?
どういう経緯で組むことに?
濱口/プロジェクトには、僕らが入った時点で14人ぐらい参加していたんですけど、そこから舞台に出られる人の選抜が何度かあって、最終的に僕らが残ったんです。
角谷/そのカンパニーは、が〜まるちょばさん含めてメンバー6人だったんです。それで濱口と話す機会が増えて、「こういうの面白いよな」とか、悩みを打ち明け合ったりして仲を深めていって、最終的に濱口が「何かやりませ んか?」って誘ってくれました。
濱口さんは年齢もキャリアも先輩の
角谷さんを誘うのは勇気がいったんじゃないですか?
角谷さんを誘うのは勇気がいったんじゃないですか?
濱口/そうですね。でも、角谷のパントマイムの技術は出会った時からすごくて、コンビを組むと、技術を盗んだりできるし、活かしたりもできるのかなというのもあって、「僕には お得しかないやん!」って思って誘わせてもらいました( 笑)。僕は自信がないのが根底にあって一人ではなかなか前に進めないから、一緒に歩む人が欲しくて、恐れ多くも角谷さんを誘ったんだと思います。僕は本番中めっちゃ震えるんですけど、角谷さんが落ち着いてるから、年々震えることが減ってきて、少しずつ自信を獲得できている気がしますね。
ゼロコという名前はどちらが付けられたんですか?
濱口/最初、僕らは個性がなかったんですよね。個性がゼロ=ゼロ個なところから始まって、それを 1個2個...って増やしていこうみたいなところからの“ゼロコ”と...ということに。
角谷/ことにしています( 笑)。
濱口/本当の由来を。
角谷/名前を付ける時に、「僕らの共通点はなんだろう?」と考えたんですけど、そういうの、どっちも得意じゃなかったんですよ。ふたりとも両親が結構堅い仕事をやってたんで、親が堅い=「おやかたーず」 ていう名前を付けようかと思ったんですけど...
濱口/付けんでよかった。
角谷/うん。で、次にふたりの好きな食べ物がメロンだったから、“メロン” で考えようか。
濱口/「 メロンズ」 みたいなね。
角谷/もう一個の好物がどんぶり。 だから「 どんぶりメロン」。でもなんかか違うな...と。
その当時、稽古場として使っていたネットワークが「 けやきネット」という名前だった んですが、「 けやき」は英語で「ゼルコバ」というんですね。それで、ふたりとも木のぬくもりみたいなものが好きだし、聞こえもいいんで、「ゼルコバっていいな」となり、“ゼルコバ” と “メロン” で、「ゼルコバメロン」となりまして。そこからさらにメロンについて調べてったら、学術名の「メロ」に辿り着いて、最終的にて「ゼルコバメロ」となりました。
濱口/かっこいい気がすると思って、 当初はその名前で活動してたんです。
角谷/他にない、ネットで検索しても引っ掛からないような名前がよかったので、「ゼルコバメロ」は気に入ってたんですけど...。初めて参加した海外のフェスティバルが、ドイツのフリードリヒスのハーフェンという所だったんですけど、その時に「 ジルコバメイロ」とか、「ジルコなんとか」みたいな、僕らに近い名前がいっぱいあったんです。これはちょっと微妙やなというのと...
濱口/日本でもちょっと覚えにくいのか、よく間違えられてたんです。
角谷/それでもうちょっと分かりやすくしようと、ゼルコバメロから1文字ずつとってゼロコに。
濱口/ゼルコバメロが片仮名6文字やったんで、半分の3文字にしたくて、そこからいろいろ組み合わせを試して、響きのいいゼロコになりました。それが多分、2018年の6月ぐらい、本格的に動き始めてから1年ちょっとぐらいの時ですね。
そんなゼロコを、
出口さんが初めて知ったのはいつだったんですか?
出口さんが初めて知ったのはいつだったんですか?
出口/2018年のふくやま大道芸ですね。いろんなパフォーマーさんが出ている中で、ゼロコさんを写真で見た時に、絶対に自分の好きな感じだと思って見に行ったのが最初。しかもその時に客上げ(※2)していただいて。
本当に楽しかったんですよ。今まで見たことないような感じの、すごく好きな世界観で。それが顔に出ちゃってたんでしょうね。
ゼロコさんの写真に惹かれて見に行ったら客上げされて... なんか両思いになった感じですよね(笑)。
出口/うれしかった。惚れましたね(笑)。その年はもうそれで大満足。でもその時点で2018年の高知のラインアップは決まっていたから、自分の素性は明かさずそれきりで...。でもコンタクトは取りたくて、その後に静岡( 大道芸ワールドカップ) でごあいさつさせ ていただいたのが最初かと。
濱口/最初は2019年の高知大道芸にお声掛けくださったけどスケジュールが合わなくて...。高知大道芸フェスのことはパフォーマー界隈で「高知にすばらしいフェスティバルができた!」と噂になっていたんで、お声掛けいただいた時はめっちゃテンション上がりました。
角谷/その後2020年に初めて高知大道芸フェスに出られました。周りの芸人さんから評価されているフェスに出られることになってうれしかったですね。
初めての高知大道芸フェスはどんな印象を持たれましたか?
角谷/初めて参加させてもらった時には、「こんなに気を配ってくれるのか!」って驚きました。
濱口/ちょうどコロナの真っただ中で、他の大道芸のイベントもやらないところも多かった中で...
角谷/僕らが芸に集中できる環境を、スタッフさんが用意してくれていると感じて、ますます頑張ろうと思った記憶があります。お客さんに対しても本当にすばらしいアシストをしてくれて、本当に支えてもらって...。こんなにすばらしいスタッフさんをどうやって集められているのかとか、どうやって運営しているのかとか、出口さんに聞きたいですもん( 笑)。
濱口/あの時期( コロナ下) に開催してくださったことは、僕らの希望でもあったんですよ。もうこの仕事ってあかんのかなって、多分みんなよぎったりしたと思うんですよね。その頃にしっかりと体制を整えて、 会場も入口と出口を分けて、席も離して配置してっていうのがすごかった。
出口/奇跡的にいいタイミングではあったんですよね。コロナが一瞬下火になって、いいタイミングではあった。僕らの意地じゃないですけど、自分らの意志でこれをやらないといけないんだという気持ちが強かったですね、あの年。三雲いおりさんがオープニングセレモニーで、「今開催してくれることが我々の救いです」って言ってくれて、しょっぱなから泣きそうだった。
濱口/あの時はお客さんを大道芸のパフォーマンスに巻き込むことができなかったんで、代わりに芸人が仮面舞踏会に参加しましたね(※3)。
出口/加納さんと「仮面舞踏会やるのは無理だよね?」「さすがにそうですね」 というやりとりがあって。でも、芸人さんとスタッフでやったらいいんじゃないかってことでやりました。しかもあの時、アヤチーガルさんの生演奏だったので余計によかったという...。加納真実さんが最後のあいさつで声を詰まらせた時は僕も本当に泣きそうでした。いや、泣いてた。この先どうなるか全く分からないあの時にあの形で高知大道芸フェスができて、本当によかったと思いました。今も時々、お客さんがYouTubeに上げてくれている動画を観て、一人でじーんとしています( 笑)。
高知のお客さんの印象はどうですか?
濱口/僕たちは言葉を使わないので、視覚=見るということがすごく大事なんですけど、その分どうしても観る側に集中力が要るんです。高知のお客さんは集中して観てくれて、楽しもうとするエネルギーをすごく感じます。積極性や面白がる力がすごくあるような感じがします。なので僕らもどんどん楽しくなって、どんどんどんどんいいものになる。打ち上げのお酒の席でも、皆さんがお酒の場をすごく楽しそうに過ごされているのを見て、そういうところからも高知の“面白がる血”みたいなのを感じます。
角谷/高知は熱い方が多いというのが僕の印象です。観てる時の目線がめちゃめちゃ熱いというか、あったかさを感じました。一生懸命、しかも何か情熱のようなものを持って観てくれてるような印象を受けます。
そうやって高知とゼロコさんの絆が年々深まるなかで、
今年はホールという全く違う場所で見られると…。
この舞台公演はどういう経緯で決まったんですか?
今年はホールという全く違う場所で見られると…。
この舞台公演はどういう経緯で決まったんですか?
濱口/ 東京の劇場公演を出口さんが見に来てくださって、いつか高知でも舞台をやりたいというお話をするなかで、いろいろタイミングが重なって、「今年の高知大道芸フェスの前日にやろう」という話をいただいたんです。
出口/ 何年か前からゼロコのシアター公演をやりたいという願望はずっとあって、タイミングを見ていたんです。ある朝急に思い立って、県民文化ホールさんに相談したら、その日のうちに濱口さん(県民文化ホール担当)と会うことになって。
偶然にも、県民文化ホールさんでも小劇場計画みたいなのがあって、「この日ならできますよ!」って、とんとん拍子で話が進んで…。でもその時点でまだゼロコのおふたりに話はしてなくて、ふたりにご連絡したんです。「高知でこんな話があるんですけど…」って。
濱口/ めっちゃうれしかったです。舞台を県外に持っていくって結構大変なことなので、それを出口さんが実現してくださることが。
出口/ 今回やられる舞台は、中身はすごくいいけど、高知でどうやって動員するのか…という不安は残りますが、「ま、いっか。やれるんだからやろう!」と。向こう見ずなのが僕の悪いところなんですけど(笑)。
濱口/そこも正直に言ってくださいましたもんね。「まずはやってみましょう」というところで。
角谷/ 僕らとしても、地方ではなかなか集客できないことは分かっていたんです。何か大きなきっかけがあって、もう少し名前が広がらない以上、地方でやることは難しいかなと思っていたところに、出口さんが声を掛けてくださって、天にも昇る気持ちでした。
出口/ うちも高知大道芸フェスに集中したいからフェスとは別の時期にしたかったけど、フェスの前の日、偶然ホールが空いていて、「よく考えたら前の日にやった方がみんなが来るんじゃないか…」と思い始めて。出られるご本人にもうちの社員にも誰にも相談せずに勝手に決めてきたんですけどね(笑)
濱口/それが逆にありがたかったですね。いろいろ考えるといつまでもくすぶっちゃうんで。
角谷/ 僕らが組んだ最初の頃も、本当にそんな感じだったんですよ。失敗してもいいから、とにかくやってみればめっちゃ学びになる。失敗してもいいぐらいの感じで挑むことが大切だと思いますね。
この舞台「フラッグ」はどういう内容なんですか?
濱口/大道芸とは全く違う作品で、舞台でしかできないことをやります。ストーリー重視で、心の動きや内面の部分をしっかり見てもらえるような、笑っているうちにいつの間にかメッセージが伝わってくるような、そういう作品になっていると思います。舞台セットもほとんどなくて、基本的には一本の旗と僕らの体二つだけという、すごくシンプルな感じです。
今回の高知視察で、さらに構想が膨らみましたか?
角谷/出口さんに山や海に連れていってもらって、作品に昇華できそうなヒントが結構得られました。高知のいいところを作品に落とし込めるよう、これから模索していく感じですね。そういう部分も楽しんでもらえると思います。あとは、県民文化ホールさんにも下見にいったんですけど、舞台に立った時に、すごくやりやすそうだと感じました。いろんな距離感とか。
舞台ならではの見せ方も?
角谷/僕らはライブ感を大事にしていて、お客さんの反応を見ながらテンポを変えたりとか、リズムを取ったりとかするので、その時のお客さんと、その時その瞬間だけにしかできない高知だけの味になるんじゃないかな。
濱口/舞台って、演者と演技する場所があるだけじゃ完成しないんですよ。お客さんが入って初めて完成するんです。その言葉どおりで、お客さんのリアクションとかによって変わっていくと思います。
角谷/お客さんと一緒に作ってるんだなというのを毎回感じますね。お客さんと一緒に呼吸を合わせてやるのが面白い。ストリートで経験してきたことが舞台に活きて、舞台で経験したことがストリートで活きて…と、双方いい感じで育っていっていると思います。ストリート・舞台どっちかだけではなくて、両方のよさというのをもらい合いながら、その真ん中を表現できたらいいなというふうに思ってます。
最後に、舞台もフェスも楽しみに待ってくださっている
ファンの方々にメッセージいただけたらと思います。
ファンの方々にメッセージいただけたらと思います。
角谷/まだゼロコを観たことがない方も、目の前でパフォーマンスを見ることでいろんな発見があると思うので、ぜひそれを体験しに来てほしいなと思います。9月26日の舞台もそうですけど、その次の日の27、28日の高知大道芸フェスでもあらゆる体験ができると思うので、ぜひ足を運んでいただきたいなと思っています。一緒に思い出を作りましょう。
※2…大道芸やマジックなどの演出のひとつで、パフォーマーが観客にお手伝いをお願いして、ステージ上に上がってもらうこと
※3…加納真実さんがお客さんと一緒に仮面をつけて踊る人気の演目。コロナ下だった2020年は、お客さんではなくパフォーマーとスタッフが参加して仮面舞踏会をやりきった。

